気球に乗って成層圏を目指したピカール
皆さんは、気球というと大空を優雅に楽しむ乗り物と思っていることでしょう。
気球は、バーナーなどで熱した空気を使った熱気球と、空気よりも軽い水素やヘリウムなどを使ったガス気球があります。
その両方を利用した物をロジェ気球と呼んでいます。
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しかし、気球に乗って遥(はる)か上空の成層圏(せいそうけん、上空8km~50km)を目指し冒険した人がいたのです。
まさか気球に乗って灼熱と極寒である成層圏への冒険などあり得ないのです。
(写真:気球に乗って成層圏へ_wired.jp)
それを成し遂げたのが、「オーギュスト・ピカール」という人物です。
○オーギュスト・ピカールとは、どんな人?
オーギュスト・ピカール(1884年-1962年)は、物理学者(ぶつりがくしゃ)、気象学者(きしょうがくしゃ)で冒険家(ぼうけんか)でもある。
(写真:オーギュスト・ピカール_ja.wikipedia.org)
彼は宇宙と深海(しんかい)にとても、大きな関心と野望を持っていた。
彼は少年時代から科学に興味(きょうみ)を持ち、チューリッヒ大学で学んだ後、ベルギーにあるブリュッセル自由大学で物理学の教授に就任(しゅうにん)している。
同年、ジャック・ピカールが誕生する。
息子のジャック・ピカールも父と同じように探検家として有名で、スイスの海洋学者、技術者であり冒険家でもある。
(写真:ジャック・ピカール_www.rolex.com)
父のオーギュストは空を目指し、息子のジャックは深海(しんかい)を目指したのです。
○気球に乗って成層圏への冒険!
気球に乗って、果たしてどこまで高いところまで行けるのでしょうか。
それを冒険したのが、オーギュスト・ピカールなのです。
彼は直径30メートルもある、普通の気球よりも大きな気球をつくり、成層圏(せいそうけん)へ、誰も行ったことのない高い空を目指したのです。
1931年ピカールと仲間のキプファーと、ドイツのアウクスブルクにいました。
その場所は、比較的穏(おだ)やかな天候に恵まれ、気球に乗って挑戦(ちょうせん)するには、持ってこい場所であったのです。
前日から気球に水素ガスを詰め込み、地上に繋(つな)がれたまま、彼らは気球の中にいました。
気球の下には、人を乗せるためのかごがあり、かごはアルミ製のボールのような形で、中に入れるような仕組みの気球でした。
人が乗り込む船室から空気がもれないように作った、特別な気球だったのです。
船室には、外の様子を見えるように、小さな窓が一つあるだけです。
どうして、このような気球をつくったかというと、成層圏は昼は灼熱の暑さで、夜は極寒の寒さとなるからです。
ふと小さな窓(まど)から外をのぞき込んだ、友人のキプファーが、驚(おどろ)いて声を上げた。
下に工場の煙突(えんとつ)が見えたからです。
そうです、ピカールたちの気球は、大空を目指して上昇していたのです。
ピカールの冒険は思わぬ形で始まったのです。
気がつくと気球の船内で、空気がもれるシュー、シューと音が聞こえてきました。
このまま上昇すると中の空気が無くなってしまいます。
ピカールは船内の空気がもれるのを防ぐため修理し、空気のもれを防ぐことに成功したのです。
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○やがて成層圏に到着!
気球はさらに上昇を続け、周(まわ)りの空の色はだんだん黒ずみ、ついに暗い青紫色(あおむらさきいろ)に変わったのです。
そうです、ついに成層圏に入ったのです。
気球の高さは、地表から約15キロメートルにありました。
(写真:www.mif-design.com)
気球は気圧のせいで、空気が薄くなり気球の外側から押しつぶす力が弱まり、ボールのように膨(ふく)らんでいました。
ピカールたちを乗せた気球は、更に上昇を続け、ついて地表から約16キロメートルの高さまで到達したのです。
○寒さと暑さにたえて!
ここで問題が発生していたのです。
操作用のロープが絡(から)まり、気球の水素ガスの量を調整できなかったのです。
このままでは、地上に戻ることができません。
成層圏では、夜になると外気温(がいきおん)が-50℃~-75℃になります。
特別につくった船室は、だんだん冷えてきて、ピカールたちは寒さをしのぐことになったのです。
船室の壁には霜がつき、ひどい寒さになっていきました。
昼になると今度は太陽が昇り、日差しの強さは地上の2倍ほどとなり、灼熱の暑さに悩まされることになったのです。
気球は寒さで少しづつしぼみ、徐々に降下(こうか)していったのですが、その速度はあいかわらずゆっくりとしたペースだったのです。
このままでは、地上に到達するのは40日かかる計算になります。
ピカールたちは、酸素ボンベの酸素を少しでも長持ちさせるため、できるだけ、体を動かさないようにしていました。
午後3時になり、気球の降りるスピードが徐々に速くなり、午後8時に、ついに気球は成層圏を脱することができたのです。
しかし、成層圏を抜けると今度は気球の速度がどんどん速くなってきました。
このままでは、地面に激突してしまいます。
ピカールたちは、重りを捨てて、降下する速度に注意しながら、スピードを調整します。
地上から高さ1500メートルほどになったときに、ピカールは船室のとびらを開き、17時間ぶりに外の空気を吸うことができたのです。
ドイツのアウクスブルクから飛び立った気球は、ずいぶん離れたところまで流されていたのです。
しばらく気球は、氷におおわれた山の間を飛び、着陸できそうな平らな場所を通ったときに、緊急用のガス放出用ロープを引き、ガスを一気に放出したのです。
気球は、地面の氷にぶつかり少し転がり、地上に降りることができたのです。
こうしてピカールたちは、標高2600メートルほどの山の上に着陸するとに成功したのです。
そして翌日、ピカールたちは、冒険が成功した喜びをかみしめ、山を降りていったのです。
○まとめ
・気球は、バーナーなどで熱した空気を使った熱気球と空気よりも軽い水素やヘリウムなどを使ったガス気球がある。
・その両方を利用した物をロジェ気球という。
・気球に乗って遥(はる)か上空の成層圏を目指した冒険家がいる。
・それは、スイスの「オーギュスト・ピカール」という人物で、物理学者、気象学者で冒険家でもある。
・息子のジャック・ピカールも父と同じように探検家として有名である。
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